仕事帰り、スーパーから出てきたその時。

「すいません」

「はい」

「このスーパー、靴は売ってますか」

「あ〜、靴はないですね」

見ると、その人は外だというのにスリッパを履いている。

どこで、とは聞かなかったが、靴を間違って履いていかれてしまったと言っていた。
40代くらいの、小柄な女性。
どうも、着ているのは制服のような感じだ。

タクシーのドライバーに
『靴を売っているところ』
と言ったら、ここで降ろされたんだそうだ。
しかし、ここにはあったとしてもスリッパ程度。
なんせ、食料品中心のスーパーだ。

日曜の午後7時。
今ならデパートに間に合います、と言ったら、
「なんというデパートですか」
「ここから近いんですか」
と聞いてきた。

高島屋とか大丸とか言っても、聞いたこともないというような素振り。
制服着てるように見えるけど・・・。
デパートの名前を知らないようだ。
近くの人じゃないんだろうか。
お医者さんにありそうなスリッパを履いている。
でも歯医者さんでも日曜の、こんな時間は休診だなあ。
さすがにスリッパでは歩けないので、タクシーにもう一度乗ることを勧める。

「あまり高い靴は要らないんです」

それはそうだろうなあ。
不意に、デパートより近い地下街に靴屋があることを思い出し、そこを紹介する。

「ありがとうございます」

最後までその人は困ったという表情で、車を拾おうと去っていった。

実を言えばスーパーから私の家までは2分程度。
新しいけれど履かない靴を持っていない訳ではない。
でも何か、そこまで申し出ることはできなかった。
心残りと言えば、心残りだ。(-_-;)

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